基礎技術資料
熱伝導率
熱伝導率とは、ある物質について、熱の伝わりやすさが示された値のことである。
一個の物質において温度差がある場合、温度の高い部分から低い部分へと熱の移動現象が生じる。
この熱移動のおこりやすさが熱伝導率として表される。
単位長(厚み)当たり1度の温度差がある場合に、単位時間で単位面積を移動する熱量が係数となる。
具体的には、物質の両面に1度の温度差があるとき、1平米当たり1時間に伝わる熱量が熱伝導率として表現される。
この熱伝導率の値が大きければ大きいほど、移動する熱量は大きく、熱が伝わりやすいことになる。
熱貫流率
熱貫流率とは、屋根や壁・床の断熱性能を表わすもので、その両側の温度差を1℃とした場合、
1㎡の広さについて1時間に何キロカロリーの熱が伝わるかを示した値でK値と呼ばれます。
この値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が優れていることになる。
熱貫流率
断熱・結露の検証は強度計算とは異なり、所与の条件(室内外の温度・湿度環境)が刻々と変化するために計算ができません。
このため条件を一定に保ち(定常状態という)計算・検討を行うのが一般的です。
また、建築設計(屋根・壁の熱性能)だけで結露を防げるものではなく、建物の使用法や住まい方にも大きく左右されます。
当然、屋根・壁の熱性能を満足させるためには正しい施工も重要な要素です。以下、断熱・結露に関わる主な計算式について解説します。
(1)熱貫流率Kの計算 熱貫流率の計算は次式によります。
① K : 熱貫流率(W/㎡・℃)
ここでR : 熱貫流抵抗(㎡・℃/W)
[単位についての解説]
W(ワット) :1時間当たりの熱量を現わすSI単位で、1W=0.86kcal/h 1kcal/h=1.1628Wです。
温度の単位 : SI単位では温度はK(ケルビン)で表示されますが、本書では混乱を避けるため、
従来どおり「℃」を使用します。Kは絶対温度のことで、換算は0℃=273Kです。
[参考]
1(kcal/m・h・℃)=1.16(W/m・℃)
1(m・h・℃/kcal)=0.86(m・℃/W)
②
α:空気と熱伝達率(W/㎡・℃)
α1:室内側熱伝達率=9.5~11.5⇒10とする
α2:室外側熱伝達率=23.5~29⇒24とする
空気の熱伝達率は、空気の流れの速さ、風速、部屋の大小、材料の角度(縦・横、屋根・壁・床)、
熱の移動の方向によって変わりますが、通常計算時には室内側「10」、室外側「24」を使います。
③
部材の熱抵抗の和です。例えば野地板、断熱材、金属板など数種類の材料で構成される金属屋根の部材熱抵抗は、
となります。
ここで、ℓ: 材料の厚さ(m)、 λ:材料の熱伝導率(W/m・℃)
<1> 開口部・隙間
開口部等があると空気の流れにより熱移動が生じ、断熱性能は大きくて低下します。
しかし開口率が大きいと換気効果が上がり、結露には安全である場合もあります。
<2> ヒートブリッジ・コールドブリッジ
通常、一般部より目地部や付属部品(タイトフレーム、垂木、金具等)やファスナー部からの熱の移動が多くなります。
場合によっては、それらの部位に表面結露(局部結露)が生じることがあります。
<3> 平均K値
上記の①及び②などの熱欠陥を含めた屋根・壁材の断熱性能を平均熱貫流率(平均K値)として検討する必要があります。
また、熱欠陥部の要因や施工の良否により断熱性能が大きく左右されます。
しかし、これらの要因は、一般的には設計・計算時には、無視されているのが現状です。
図 温度分布の例
表 各種材料の熱伝導率
計算例
次の条件において、結露の有無を計算によって確かめてみます。
① 屋根仕様
二重折板 カラー鋼板(0.8mm)+グラスウール100mm(10kg/㎥)+カラー鋼板(0.8mm)
(1)熱貫流率の計算
① 計算条件(部材熱抵抗)
② 熱貫流抵抗(R)、熱貫流率(K)の算出
表 金属屋根の断熱性能比較